2012年8月16日木曜日

Position Paperの導入――その光と影


昨日に続き、こんにちは、会議監督です。
本日はこの会議の特徴であるPosition Paper(以後、PP)について、お話したいと思います。



この課題(タスク)は、7/20に参加者に提示され、8/12に提出して頂きました。
これまでの模擬国連でよく採用されてきたQ&A形式のTask Paperとは異なり、各国の政策立案に関するエッセイを書いてもらう形式のPPを採用しています。

前日の記事でもこのPPの狙いに関しては説明しましたので、今回は現状経過を皆さんにお伝えしたいと思います。


〆切の8/12 0時では、43ヶ国(47)38ヶ国(42)の提出が行われ、また、いくつかのトラブルで提出が若干遅れた人も含めると、現在43ヶ国中41ヶ国(45)PPが提出されました。これはかなり高いレベルの提出率であると言えるでしょう。


この要因として、ポジティブな点を考えると、

・他の議題(安保理改革)を参考に、会議監督が作成したサンプルを提示したこと
PPへの移行に、一つ、ワンクッションとして7/31〆切のQ&Aの簡単なタスクを課したこと
・事前交渉を考えたり、WPを作成したり、といった他にすることが無く、専念できた

などが挙げられるでしょう。


逆にネガティブな点としては、

Task Paperほどリサーチしなくても書ききることが容易
・簡単にしようと思えばいくらでも簡単になる

ということが挙げられるでしょう。


では、実際のPPの内容はどうだったかを検討したいと思います。(これは参加者への講評も兼ねています)

PPは、だいたい3つのレベルに分かれていました。それぞれ、

BGの内容をなぞったもの
・国内の状況も考慮に入れ、BGの内容をなぞったもの
・国内状況・BGを上手くまとめ直し、政策立案に至ったもの

とすると、それぞれ3・4・3割の割合くらいか、と考えます。

ただ、BGの内容をなぞる、とはいえ、国際法の法的根拠や自国の主張の根拠を、公式文書(国連決議・軍縮会議決議など)を用いて明らかにしていることが重要です。この点は会議監督が予測していたよりも多くの人が実践していました。これはサンプルの影響が強いように思われます。従来よりも、根拠ある議論が展開されるのではないか、と期待しています。

一方で、BGで強調したRMA(軍事における革命)の影響に関して考察を行っている人は、そこまで多くは見られませんでした。核兵器などの大量破壊兵器を搭載した弾道ミサイルに関して言及がみられる例は多かったのですが、通常兵器の弾道ミサイルによる通常即応型グローバルストライクといった、新しい形態の脅威を考察する狙いが、やや達成できなかったように思います。従来のトレンド(90年代から00年代)に近い議論になるのではないか、と予測されます。

↑ 通常即応型グローバルストライクを説明するNew York Times
図(上のサイトより)




会議監督としての反省点を述べるならば、BGに「ここ数年の議論の歴史」を載せるべきであった、ということが挙げられますが、現実的に可能であったかと問われると難しい部分があります。この議題が模擬国連であまり扱われてこなかったこともあり、大枠を把握することで時間を割いたのが今回の現状でしょう。さらに細部の調査に関しては、今後この議題を研究する後世の会議監督に任せたいと思います。


さて、PAROSに関する議論は、我々は「Governance Issue」と呼んだのですが、軍縮会議(Conference on Disarmament)のリンケージの問題にも含まれます。これは、軍縮会議という唯一の多国間軍縮交渉フォーラムが、コンセンサス採択ゆえに議論が進展していない、という問題です。

一昨年から国連総会でも大々的に取り上げられるようになり、また昨年、野心的な決議案が作成され(採択はされなかった)たこともあり、今回は非常に多くの国が軍縮会議の改革に興味を持っていることがPPから分かりました。こちらの点も、大きく会議に影響するものだろうと考えられます。



PPの導入は、提出率の高さと法的根拠を辿る「相手を説得すること」を念頭に置いたロジカルな自己認識の確立と言った点から、成功と呼んでも良いとは思われますが、一方で様々な課題も見つかりました。今後、参加者の感想を聞きながら、上手く改善を図っていくことが重要であろうと考えます。
また、PPはBGとも極めて連動性が高いように思われます。PPを今後導入していく際には、参加者にどのような質問を投げかけるのか、BGの構成がより一層問われる形になるのではないでしょうか。

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